SFCではさまざまな研究をすることができます。実は、その多くの研究がフランス、フランス語圏と関係しています。さらに、直接の関係はなくとも、フランスを知ることで研究が広がったり、深まったりします。そんな研究活動を実践している学生や先生をご紹介します。(学年、所属は2014年1月現在)
①国際関係
私はヨーロッパに興味があったため、EUに関して研究しています。EUは昨年以前からギリシャに代表される深刻な経済危機に陥っており、EUは地域全体で責任を負いますが、危機に瀕している国への対応に国ごとの意見に差があります。その中でも英、仏、独の考え方・力関係を見ていました。
フランス語を学んでいけば、フランス語の新聞や文献も読めるようになり、研究に生かせる。研究とフランス語は密接に関わっています。(環境情報3年 末吉由佳)
フランス語を学んでいけば、フランス語の新聞や文献も読めるようになり、研究に生かせる。研究とフランス語は密接に関わっています。(環境情報3年 末吉由佳)
②マーケティング
私は高校3年間フランスに留学した時、街に溢れるショーウィンドー、キャンペーンや広告に「美」を感じ魅了されていました。後にこれらはマーケティングの一貫であることを知り、興味を持つと共に本場フランスのESSEC大学で学びたいと思い交換留学に応募する決意をしました。その留学先では、各国から集まる留学生とディスカッションやグループワークを重ね、多様な人の文化や考えに触れる経験ができ、また著名人の講演では、ラグジュアリーブランドのマーケティングはその商品の価格や質以上に、ブランドが持つ世界観を理解することが大切だということを学ぶことができました。将来は、この経験を生かしてマーケティングに携わり、世界中の多くの人に幸せを与える仕事がしたいです。(総合政策4年 折田楓)
③ヒューマン・セキュリティー
私の個人研究分野は、東南アジアにおける移住労働とヒューマンセキュリティです。中でも、移住労働者の女性化現象とその背景、女性移住労働者が国境を越えた移住労働を選択するまでの意思決定の過程、移動先での安全確保に注目しています。フランスの大学への交換留学中には、フランスの外国人法、人権に対する考え方などを学んでいましたが、その時の知識や視点は、地域を越えても活かせる点が多くあると感じました。「フランス語は好きだけれど自分の研究分野と関係があまりない」と残念に思いながらも細々と学習を続けてきたからこそ、最近になってようやく個人研究との関連性が見出せるようになったことを、とても嬉しく思っています。(総合政策4年 中西茉奈美)
④数学
数学自体がユニバーサルな言語なので、数学は他の分野よりは語種に依存していません。でも論文は圧倒的に英文が多いです。次がフランス語ですね。学生のころは“理工学はドイツ語”と誰かにいわれドイツ語を勉強しました。でも研究者になり、延べ3年、フランスのナンシーに滞在しました。フランス語を勉強しておけばよかった・・・C’est la vie ですね。 考えてみればデカルトやパスカルから近代の哲学、思想、数学が始まっています。数学分野のノーベル賞であるフィールズ賞の受賞者数上位は、米国12人、仏国11人、露国9人です。日本は3人、ドイツは1人です。やはり数学を勉強したければフランスですね。最後にアドバイスです。フランスを訪れたら、是非、地方へ行きましょう。Vin et Fromage そして La cuisine regionaleを堪能することがフランスを理解する近道です。(総合政策学部長 河添健先生)
⑤経済学
歴史上の人物のフランソワ・ケネーがフランス人である事を知っている人は多いと思いますが、現代の経済学者にも、産業組織論のジャン・ティロル(トゥールーズ大学)といった著名な理論家や、経済格差問題の優れた専門家であるエマニュエル・サエズ(UCバークレー校)、トマ・ピケティ(EHESS)等がいます。経済学の中心地米国における研究は、市場競争及び効率性重視で総じて特徴付けられますが、フランスの経済学者の多くは社会的公正の探究・追求に、より重きを置いている様に思われます。また、ロベール・ボワイエの様なレギュラシオン学派に顕著なのですが、政治や社会から経済を操作的に切り離さず一体化して捉え、また歴史の流れを重視する傾向があります。確かに彼らは論文を英語でも書きますが、フランス語の著作に触れ、彼らとフランス語で直にディスカッションできるならば、経済をより多面的に理解する上で得るものは極めて大きいでしょう。(小澤太郎先生)
⑥政治学
フランスの歴史や政治関連の人物の考えた事について、フランス語を用い、より近くで直接的に学びたいというのが、私のフランス語習得へのモチベーションとなっている。私の大きな研究テーマは、民主主義である。特に国民と政治の関係だ。SFCに入り、1年の秋学期から曽根泰教研究会に所属し、主に現代日本政治制度論、政治学を勉強してきた。その中で特に投票率の低さに現れている国民の政治関心の低さを問題と捉え、政治関心はどのように高まるかを考えるようになった。そしてフランスの政治の捉え方に興味を持った出来事が起こる。アリアンスフランセーズにて語学研修を受け、初めてフランスを訪ねた際に、パリの街中で平然とデモが行われているのを目の当たりにした事だ。またフランスの歴史の中には、モンテスキューやトクヴィルといった、近代政治学・政治哲学の基盤となるものを作った人物が多く、英米の政治学が主流な昨今においても、対抗しうるきわめて重要な意義を持っているのではないだろうか。(総合政策2年 市川勘太郎)